日常よくあるこの言葉、我々落語界でも使うが、意味が全く違う場合がある。
例えば一般社会で、
「あいつは1時間残業して、6時でアガったよ。」
この場合、アガるは仕事を終えて「帰る」と言う意味。
ところが、落語、寄席の世界では、
「師匠、明日は6時アガりでございます。」
アガる=上がる、つまり高座にあがる、落語を開始する事を指す。
仕事を「開始する」と「終えて帰る」という、一般社会と真逆の意味になるのだ。
前座の時、とある大御所の師匠から楽屋に電話があり、
「○○さんはアガったかい?」と云われ、
私は、○○さんは帰ったか?と尋ねておられると思い、
「いえ、今ちょうど高座中です。」と答えたら、
「…? じゃ、アガってるんじゃねえか!」
と云われた事がある。難しく考える事はないが、考えると難しい(笑)。
もう一つ我々の世界にアガるがある。
「噺(ネタ)アガったか?」
師匠方に落語の稽古をつけて頂いても、その師匠のOKが出るまで高座でやったらアカンしきたりがある。
アガった?=OKもらえた?
つまり「仕上がったか」という事。
一般社会の帰るに近い。麻雀や双六のアガリもそう。寿司屋のアガリも仕上げのお茶か。
私、落語「初天神」の凧上げの場面、うまくアガらない。下手なだけや(笑)。